印象に残るバー

若い頃からお酒が好きで、同じ酒好きの友人達とバーに足を運ぶことが多々ありました。訪れた数々のバーの中で思い出に残っているバーの1つが、銀座コリドー街にあったクールです。学生時代からの親友が無類のお酒好きで、彼は大学受験で上京した際に、学生服を着てクールに行ったという強者なのですが、その彼に連れて行ってもらったのがクールでした。クールの古川緑郎さんと言えばバーテンダーの世界ではレジェンドですが、彼に作ってもらったサイドカーは本当に美味しかった記憶があります。もう何年も前に閉店しましたが、訪問したお客さんを魅了する素敵なお店でした。

印象に残っているもう一つのバーは、自由が丘にあるレイラです。こちらも20代から30代にかけての若い頃に良く訪問したバーです。サイドカーのレシピは、通常ブランデーが1/2に、ホワイトキュラソー1/4、レモンジュース1/4なのですが、クールではブランデー、ホワイトキュラソーとレモンジュースがそれぞれ1/3づつの割合になってなっていたかと記憶しています。レイラでは恰好をつけて、クールと同じ1/3づつで作って下さいとお願いしていました。今から思うと、とても恥ずかしいことなのですが、レイラのバーテンダーさんは、嫌な顔１つせずに作ってくれていたのが印象に残っています。何年かぶりにレイラにふらっと訪れてサイドカーを頼んだ際にも、「いつもと同じ作りかたで良いですか」と聞いて頂いたのを良く覚えています。もう10年以上訪問出来ていませんが、このブログを書くにあたりネットで検索したところ、今もお店を営業されていました。

3店目のバーをあげるとすると、昨年前職時代の同僚に連れって行ってもらったバーがとても印象に残るバーでした。そちらのバーは外部には一切お店の情報を公開しておらず、お店の前に辿りついたとしても、店先に看板やネオンサイン等を一切掲げていないので、そもそもそこがバーとは分からない造作になっています。（そちらがお店の方針のようですので、店名や場所については伏せておきます。）初めて連れて行ったもらった際に、オーナーバーテンダーさんに「これだと新規のお客さんがなかなか増えないですよね？」と聞いたところ、バーテンダーさんから「お客さんが増えて何か良いことあります？」と聞き返されました。この答えには流石に、「えっ！」と驚いたのですが、確かに言われてみると、馴染みのお客さんだけでお店が回るのであれば、そちらの方がお店にとってもお客にとっても良いのかなと思い直した次第です。先日訪問した際に、季節のフルーツ（ざくろ）を使ったカクテルと、サイドカーとアレキサンダーをお願いしたのですが、どれも本当に美味しく、マーケティングに力を入れたら直ぐに繁盛店になるのになあと思ってしまいます。ひとつだけ気がかりなのは、これまで何回か訪問したのですが、滞在していた1時間半程の間に、一度も他のお客さんに会わなかった点でしょうか。そのバーを訪れた帰り道には、「おいおい本当に回っているのか」と心配になります。素敵なお店だけに、是非とも長く続けて欲しいと思っています。